4 お接待(おせったい) (堀江中心に)
 

 春、麗かな一日を、北鴨のお大師さん四国七十七番札所(道隆寺の茶堂)へ、米・草餅・赤飯・ちり紙などを持って行って、四国八十八ヶ所巡拝の、お遍路さん(おへんろという)に上げるのである。
これを「お接待」(おせったい)という。
 先づ茶堂の縁先へ、これらの品物を積んで、この札所(四国霊場第七十七番)へ巡拝して来たおへんろさんに一人一人、これらのうち自分の好きなものを上げるのである。一方お弁当を食べるおへんろさんに、茶堂の大釜で沸いている湯の接待もする。貰ったおへんろさんは、徒歩だけで四国中を巡拝して疲れているので大変よろこばれたり、感謝され、お接待を貰うと、一枚づつ納経挟みから自分の住所氏名、真中に「四国八十八ヶ所巡拝」「同行二人」と書いた経札を呉れる。
 時には、グレへんろ(常習的に附近の霊場札所を廻って、このお接待稼を目的とする)が何回も顔を出して来る。「佛顔も二度三度」といって腹も立つし、嫌になることがある。
 一応持って行ったものをお接待して済むと、大抵講を作っているので、皆んな揃って中津公園や、少し延びて、塩屋御坊附近裏手の海岸へ行って、打ちくつろいで楽しく弁当を開く。
 このお接待をするため、大抵、接待講を組んで、毎月掛銭(かけせん)をしたり、米や麦などを集める。
 なお、このお接待の最も大掛りなものは、備中・備前の接待講で、私の小さい時には、多度津の港や、蛭子町の漁師浜に何々接待講と書いた大幟を何本も舟に立てて来て、大勢で北鴨大師へ行き泊りがけでお接待をしていた。
 泊るのは、この寺の本坊(明王院)が定宿である。また乗って来る船を「接待船」と言う。大抵一・二泊してから、琴平さんへ詣ってから又、船に乗って帰える。
 その豪勢なこと、今も茶堂の北側に、その接待講の碑が建っているのを見ても判る。
 このお接待は四国中、大抵どこにもしている。然し今はおへんろさんも殆ど貸切バスで霊場巡りをするようになり、お接待のようなことは、する人も無くなり、偶に一人でチリ紙などを上げているのを見るくらいである。

 附記、この附近では今はないが昔、善根宿(ぜんこんやど)と言って、夕方、近くの霊場で待っていて、巡拝のおへんろさんに頼んで、一晩、その人のうちへ来て泊って貰う。これを善根宿をするといい、泊銭などは取らない。その日は、その人のうちに命日に当る佛があるか信心の願いからであるので、精進料理でもてなす風習があったと聞く。
◎ 私も若い時、淡路西国を巡拝した時、この善根宿に十日のうち六日まで泊った。

 
   施主
備前 備中 備後
  接待講中
 
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