13 盆おどり
 

旧暦の7月14・15日の夕刻から、大抵の村々で盆おどりが行なわれていた。
 この近くの堀江もその例外でなく、夕方からソロソロ鎮守の八幡さんへ集まって来て皆んなが調子に乘った頃は、この踊の輪が二重にも三重にもなって賑に夜を更かして踊り抜くのである。
中央に「やぐら」を組んで笹を四隅に立て、紅白の幕などで飾りつけ、提灯をつるす。
音頭取りは番傘をさして、自慢の美声を張り上げて唄うと、これに合せて手拍子、足取りも軽く、夜の更けるのも忘れて踊り抜く。好きな人は丸亀や、善通寺辺まで踊りに行ったり、また来る人もあった。
 この盆おどりにも色々あって、堀江では普通「一合蒔いた」に盡きるが、夜も更けて来ると、男女変装して出直して来て、また一段とはずむ。鹿々踊り、大平踊りともなって来ると一寸難しくなって、子供達は見る方になり、主に年配の男女に限られたようだ。
高見島などは最も盛んな処で、新佛(しんぼとけ)がある家ではその吊ってある佛灯篭を軒先に吊して踊って貰う風習もあり、大太鼓の音が静かなお盆には、海上一里半を伝って、この裏の浜でもよく聞えたものである。それも夜が明けるまで続いた。
然し現在は、ここ4・5年前から、学校の指導もあり、そんな関係で大抵午後十時前後には終らせている。要するに昔の一種のリクレーションとも云うべきか。
なお堀江には掛野大四郎さんと言う人がいて、美声の持主で何回となくラジオ放送に出た歌上手で、近隣にも有名であった。

ちらし寿司多度津町立資料館在郷風土記もくじ前へ次へ
inserted by FC2 system