8 五月、農家で田植え始む  
 

 農家にとって一番忙しい時節でもある。麦刈、取込に引続いての重労働である。
 私の祖父母も農家の出、私も子供の時には、よく農作業を手伝った経験もあるので少し農作業のつらかった思い出を綴って参考に資したい。
 まづ、苗代作りで、スクスクと伸びた稲苗を抜くことから、この田植えは始まるのである。
一日中、降り続くこともある、五月雨時期が田植え最盛期でもある。かがみ込んで苗を取るのが子供や年寄の仕事であった。それから苗運び、女達は殆んどが田植えに掛る。時にはスネまでつかる泥田(砂古田ともいう)に入り、手際よく、五・六本づつ定木を使って直線正方形に植えて行く。
 現在では、自動田植機が出来て、一人で見る見るうちに十アール位は植えて仕舞うが、昔は一反(十アール)を一人で植えたら、上人(じょうびと)と言われる位い、辛らい作業であった。
 この田植作業に伴って、いわゆる、田植唄も自然に生れて来たのだろうと思う。その田植唄につれて、少しでも、苦痛を和らげ、それによって、能率を上げたのでもあろう。

田植え終り「さんばい」のこと

 田植えが終ると農家ではどこでも「さんばい」と言って、鰆の酢漬を上置きにした五目ずしを作り、これに胡瓜もみ等と一緒に、近所や、親類、その他、日頃世話になっているうちへ配る。

   
      田植え風景・北鴨 (グラフたどつ)

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