6 デコ使い
 
 おそらく阿波国(徳島県)あたりから来ていたと思う。
 この「デコ使い」は、黒い木箱に、口や目や、手の動く仕掛になっているデコを二つも、三つも、引っ掛けて、棒で担いで、これも、町から町へ、村から村へと、流して歩く旅の大道芸人である。
適当な場所で、荷をおろして、「東西東西○○で只今から、阿波源之丞相勤めまする外題(げだい)は先代萩の何々、阿波の十郎兵衛・・・何々、只今より初まり初まり」と拍子木を叩き乍ら、村中を、ふれ歩いて、そろそろ人が寄って来ると、それから、口三味線・太鼓・人形デコ使いなど、一人、三役も四役もで、何かの歌舞伎を演じ、終ると、ここでも盆まわしなどで、お金を集めて廻わる。
子供心に、何も判らなかったが、ただ、どうして目玉が動いたり、口や、まゆ毛が動くのかと、不思議に思って見ていたものである。
この外に、手品師・薬草うり・その他が、時々、村を訪れて、それでも結構、老人や、子供達を楽しませてくれた。何れも昔、なつかしい思い出の一駒でもあった。
 また、獅子舞、これは秋祭にするものとは違って、頭に小さい獅子頭をつけ、小さい太鼓を首にかけ、一人で何か祭文などを唱え乍ら、戸毎を門付けするのである。現今でも時折り、これが来て一寸荒(す)ごみのある若い者が来て、家々では、嫌がられている。

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