○ 改心した泥棒    (佐柳島 谷頭さと婆さん)
 
 昔、親爺さんと二人の息子があったそうナ
兄の方はゴクトレ(道楽者)で弟の方は孝行者で、いつまでも百姓していても暮しは楽にならないと弟は爺父さんに楽をさすには他へ働きに行かないかんと言って町へ働きに出た。まじめに三年働いて五拾両という大金を溜めたので、これでお父うを安楽にして上げようと故郷へ急いだが途中、山で道を迷って、とうとう夜になって暗くなってしまった。仕方なく歩いていると、泥棒が出て来て「有金全部出せ」と言うので、弟は仕方なく全部お金を渡すと泥棒は、この先々、又何が出るか分からんけにと刀、一本呉れた。然し弟は金が無くなってしまって故郷のお父のとこへ帰るわけにも行かず、又引返えして、元の親方のとこへ戻って、「山で泥棒に会い持ち金全部取られたから、もう一ぺんここで働かして下さい。泥棒はこれから先、何が出るかも判らんけにと、刀一本は貰うたけど」といって刀を出して主人に見せた。
 そこで主人はこの刀を「目きき(鑑定)」して貰ったら二百両で買ってくれたので、今度はちっとも働かないで、二百両も儲けたので、今度は判らんように弁当箱の底へ隠して、山越して帰える道々、この大金は、あの男に刀を貰ったお蔭だから、半分はあの泥棒に返さないかんと、山道を歩いていたら、前の泥棒と、峠で出逢ったので、譯を話して「半分は取って呉れ、そして残り半分はわしに呉れ」と言った。
 泥棒も感心して燃き火にあたり乍ら、色々と話をし、泥棒がお前の故郷は何処かと聞くので、こうこうした処だと答えると何と自分の弟でないか。
 そこで兄も名乗って二人で抱き合って喜こんだ。
兄もそれからとうとう改心して二人で家へ帰えって末永くお父さんを大切にして仲良く暮したという。
                                  おしまい


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