5 鴨市 (大饗市・おおぎょういち)
 
 嘉元三年(1305年)に再興さると、古書同寺温故記にある。それより以前にもあったかも判らないが、この年、再興以来は續いているのがこの俗にいう鴨市である。
 北鴨・道隆寺にある妙見さんのお祭りである。当日この妙見さんにお詣りして見るがよい。神前には、三合三勺の強米が炊かれて、円錐形に盛られてあることを。(この由来については、本書の初の方に何処に関連することを書いてあるから)

 さて、この鴨市の昔風景とでもいうべき一駒を描写して見よう。私らの子供の時である。私らは、皆んなこの日、鴨市の来る日を待ったことか、当日ともなると、五厘から始まって二銭・三銭、多くても五銭上がりのお小使いを貰うや早々、北鴨のお大師さんへ走ったものである。
 大寺の森から流れ出る太鼓や、ハヤシの鐘の音、一種異様な別天地のように思えた。境内には処狭ましと、沢山な植木類の市、伽藍の横には「のぞき」「からくり人形」おもちゃの店、ハジキ豆、ところ天、ラムネ、みかん水、お焼き、などの店が軒を並べていて、結構、子供心を一杯楽しませて呉れたものである。勿論、外に遊ぶ所も少い時代でもあったので。
 その後、市立は多少変って来て、農機具なども展示されるようになっているが、昔からの鴨市は今でも相当な賑いを呈している。
 この春市は、塩屋市・海岸寺市と続き、最終が金倉寺市で終る。これが終ると麦刈りに忙しくなる頃である。


鴨市(昭和40年頃)


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