12 白仏 (しろほとけ)(佐柳島古談)
 
 昔な、こがしの好きな爺さんがあった相な。婆さんに、ようけ(沢山)こがしを作ってもろて、山へ行って、好物のこがしを、はねよった。
ところがナー、突然、大風が吹きよって来て、この爺さんの身体が、こがしが飛んでひっついて、白うなったそうな。
 ちょうど、ここを通りかかった村の人々が「白仏さんが、お出でじゃ、お出でじゃ」と言うて、お賽銭を沢山投げて呉れたので、その爺さんは急に大金持ちになった相な。
 この話を聞いた隣の慾深い爺さんはケナリーなって、婆さんに沢山、こがしを作らして、山へ行って、なんぼ、こがしをはねていても、チョットも風が吹きよらん、そこでこの爺さんは、自分で食べ残りのこがしを身体中にもぶりつけて、白くして、ジッと待っていた相な。
 やっぱり、そこへ村の人達が来て、「今日は白仏が寝てござるわい」と言い乍ら、お賽銭を投げていくので、この爺は、あんまりおかしいので、プッと吹き出して笑ったところが、塗っていたこがしが一ぺんに飛んでしもて丸出しになった。
 これを見た村人は「この白仏はニセもんじゃ」というて棒切れや、ごんけつで叩かれ、痛い目に逢うて来た相な。
  候へばくばく

こがし=はったい粉・オチラシとも言う
もろて=貰って
ケナリー=胸糞の悪いこと
なんぼ=いくら
吹きよらん=吹いて来ないこと
飛んでしもて=飛んでしまって
ごんけつ=拳骨のこと


ちらし寿司多度津町立資料館在郷風土記もくじ前へ次へ
inserted by FC2 system