6 雷さんと隋神さん
 
 多度津町の東、北鴨部落にある加茂神社の周囲には昔、桑の木が沢山植えてあった。
そのためか、北鴨の道隆寺のお大師さんのお寺の名前を桑多山・道隆寺と言う。
何百・何千本もあるその桑畑の中へ、ある年の夏のこと、雷さんが落ちてきてアッと、いうまに桑畑は焼けてしもうた。
 この時、加茂神社の隋神さんが、大変怒って、雷に向って弓を打ち込んだので、雷も怒り、盛に火の玉を投げつけたが、雷さんはついに負けて、逃げながら大声で、「これから、われらはこの加茂の桑畑には決して落ちないから、この土地にお墓を作るなよ」といった。それから加茂にはお墓を作らなくなり、また雷さんも落ちたことがないという。お墓は堀江の丈六という墓地にするようになったという。
 今でも時々、子供たちは「ドンドロ、ドンドロ、鴨へ行け、加茂のおば々のへそを取れ」と唄われているが、これは加茂へ行け、そこには有難い、お大師さんが、おいでになる。お詣りする時には決して、オババ(大馬場・この馬場先には今も大きい松並木が残っている)の「へそを取れ」は渕(ふち)端(はた)を通れと、言うのがほんとうらしい。

 (註)多度津地方の方言で、渕(ふち)を「へち」ともいうので、これが「へそ」になったのだろう。


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