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    在郷風土記   鎌田茂市著
 
 在郷とは,都会に対する田舎のことであり,在郷風土記は,父鎌田茂市(かまだもいち)が讃岐(香川県)の田舎町多度津町の歴史,風物,風俗,伝承などをまとめた私家本である.父は多度津港務所長を最後に町役場を退職し,その後,多度津町立明徳図書館長を務め,昭和38年に刊行された多度津町史の編さんにも関わった.これは,岳父でもあった故山崎祐一元多度津町長を顧問とし,また幼なじみの父親であった故信濃勇元多度津町長を委員長とする町史編さん委員会によって刊行されたものであるが,父はその事務局長を務めた.すでに40年以上も昔のことであり,私はそのころ,すでに学生として郷里を離れていたので,詳しいことはよく分からないが,たまに帰省したおりなどに,資料を集めるために町内を歩き回っていること,古老を訪ねて話を聞いたりしていることを楽しそうに話していたことを覚えている.
 町史に続いて,写真集「グラフたどつ」などが刊行され,多度津町のことをいろいろ調べているうちに,こういった公の資料として残すことのできないようなことがらや,世の移り変わりとともに消え去ろうとしている様々のことがらを後世に残しておきたいと考え,これを一冊の私家本としてまとめ上げた.なにごとにもまめであった父は,ガリ版(謄写版)で自家用罫紙を用意して,自筆原稿を書き上げた.自他共に認める能書家でもあり,ものを書くのが好きだった父は,半ば楽しみながら本書を書き上げ,コピーも製本も自分でやり,姉,兄,それに私はそれを一部ずつもらった.そのときは,パラパラッとめくって,よくここまでまとめ上げたもんだと感心した程度で,その後ずうっと,本箱にしまったままになっていた.
 私も,多度津町町立資料館のホームページを立ち上げて,多度津町の紹介をしているうちに,いつしか古い資料を取り上げるようになって,改めて父の在郷風土記を読み返してみると,多度津町のあれこれが,こと細かに書かれていることにびっくりした.すでに35年以上の歳月が経っており,自分の知らなかったことが多く書かれているのを見ると,まさに,父がいずれは忘れ去られてしまうだろうと予感した通りになっていることにも驚いた.そこで,これを私たち兄弟だけでなく,多くの方々に知っていただきたいと思い,ホームページに掲載することを思いついた.
 本書は,300ページにもおよぶ大作で,その全部を掲載することは無謀ともいえる作業であるが,幸い,原文からのテキスト起こしをしていただける方々があって,そのご協力を受けながら,少しずつではあっても,順次掲載していきたいと思う.新しもの好きだった父は,若い頃はバイオリンを弾き,写真機を楽しんだが,現在のコンピュータ社会を知らずになくなった.この平成の電子版「在郷風土記」を見れば,こんなことができるようになったのかとびっくりするだろうし,また,喜んでくれることと思う.



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